物流とは、物資を供給者から需要者へ届けるまでの「モノの流れ」を指します。私たちが必要なものを必要な時に手に入れられるのは、物流システムが円滑に機能しているからです。
物流は「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」といった5大機能を備えています。
「物流」は、物的流通の略です。「物的流通」という言葉は、昭和30年代にアメリカを訪れた日本の流通ミッションが、マーケティングにおける「Physical Distribution Management(フィジカル・ディストリビューション・マネジメント)」という概念を企業経営の観点から翻訳したことに由来します。「Physical」は物的なことを、「Distribution」は流通を指し、物流は流通の物的側面を管理することを意味するようになりました。
物流5大機能から6大機能へ
物流の5大機能は、輸送機能、保管機能、荷役機能、包装機能、流通加工機能の5つです。これらの機能は、物資の流れを効率的に管理するための基本的な役割を担っています。
近年、デジタル化の進展や顧客ニーズの多様化に伴い、物流の5大機能に新たに情報機能が追加され、物流の6大機能と呼ばれるようになりました。この情報機能は、物流において不可欠な役割を果たし、効率的な運用や競争力の強化に寄与しています。
各機能の役割と効率を改善する製品をご紹介します。
- 輸送機能
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輸送機能とは、物資を空間的に移動させる役割を指します。輸送には「出荷」や「配送」が含まれますが、一般的に「輸送」は長距離で1つの拠点から別の拠点への移動を指し、短距離で複数の拠点間を移動する場合は「配送」と呼ばれることが多いです。これらを総称して「輸配送」とも呼びます。
輸送には、陸送、空輸、海運の3つの方法があり、これらは物流コスト全体の5割から7割を占める重要な要素です。
- 保管機能
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保管機能とは、倉庫や物流センターで商品の貯蔵・保管する役割です。物流の過程で、商品の価値が劣化したり、破損したりすることはあってはなりません。そのため、必要な時に迅速に出荷できるよう効率的に保管しながら、商品の品質や価値を維持することが重要です。
営業倉庫は大きく3つに分類されます。1つ目は、さまざまな商品を保管する「普通倉庫」、2つ目は生鮮食品や冷凍品、加工品などを低温で保管する「冷蔵倉庫」、そして3つ目は、河川や海などの水面を利用して原木を保管する「水面倉庫」です。
→倉庫業とは
- 荷役機能
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荷役とは、荷物の積み込みや荷卸し、集荷、棚入れなど、倉庫や物流センターといった生産・保管・流通の拠点で行われる施設内作業を指します。この工程は物流の中でも非常に重要な部分であり、物流コストを削減するためには、荷役の効率化が欠かせません。
また、ホワイト物流運動の影響で、トラック運転手の作業負担を軽減するための荷役効率化が、企業の責任であるという認識も広がりつつあります。
例:パレット化の推進等
- 包装機能
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包装とは、製品を保護し、輸送や保管、取引、使用に際して、内容物を守りながら効率的な取り扱いを可能にするものです。さらに、包装には製品の宣伝や情報の伝達、新品であることの保証や安全の確保といった役割もあります。
日本工業規格(JIS)による定義では、包装とは「物品の輸送,保管,取引,使用などに当たって,その価値及び状態を維持するための適切な材料,容器,それらに物品を収納する作業並びにそれらを施す技術又は施した状態」とされています。
→包装と梱包の違い →錆から守る防錆梱包技術
- 流通加工機能
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流通加工とは、製造後の商品に「仕上げ」を施す工程を指し、生産加工と販売促進加工の2つに分類されます。これは、物流センターや倉庫、店舗などの流通過程で商品に付加価値を加える役割を果たします。たとえば、衣類の裁断などの二次加工、不良品の混入を防ぐための検品作業、値札貼りやカタログ封入、梱包など、さまざまな作業が含まれます。
流通加工の目的は、商品に付加価値を与え、信頼性を高め、顧客満足度の向上を図ることにあります。
- 情報機能
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情報機能とは、物流の五大機能である「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」を効率化し、全体を高度にコントロールするための役割を担います。具体的には、次のような情報が含まれます。
数量管理情報:貨物の追跡や入庫・出庫の際に在庫数量を管理する情報
品質管理情報:温度や湿度、振動を管理し、商品品質を保つための情報
位置管理情報:自動仕分けやピッキング、トラックの追跡など、商品の現在位置を把握する情報
これらの情報機能により、物流業務全体の効率を高め、正確かつ迅速な管理が可能になります。
ロジスティクスとは
ロジスティクスとは、原材料調達、生産、販売に至るまでの物流システムを市場連動型の仕組みとして管理マネジメントすることです。一言に物流といっても、「製造物流」、「販売物流」、「調達物流」などに細分化されます。生産地から消費地までの全体最適化を目指す概念がロジスティクスです。販売にかかわる物流だけではなく、商品の仕入れや原材料の調達にかかわる物流、返品やリサイクルに関わる物流もその対象に含め、ビジネスロジスティクス、あるいはロジスティクスと呼ばれています。
ロジスティクスの言葉の由来
ロジスティクスは軍事用語に由来しており、ロジスティクス(兵たん、Logistics)は、もともと戦略(Strategy)、戦術(Tactics)と並ぶ三大軍事用語の1つです。
ロジスティクスの重要性
ギリシャの哲学者ソクラテスも、若き日の戦争経験から「指揮官に求められる能力は戦術が占める割合よりも、自らが率いる軍に食糧・軍装備を供給し続けられる能力のほうが重要だ」と述べています。この食糧・軍装備を供給し続ける能力というのは、まさに物流システムのマネジメント、すなわちロジスティクスであると言えます。タクティクスとストラテジーは企業戦術企業戦略として併せて使われることが多いですが、ロジスティクスは物流戦略として単独でつかわれるようになりました。
ロジスティクスの三つの要素
ロジスティクスの3つの要素は、必要な物資の情報を正確に把握すること、必要な物資を調達すること、必要な時に必要な場所へ届けることです。
物流には、「調達物流」「生産物流」「販売物流」「回収物流」「消費者物流」の5つの領域があります。さらに「消費者物流」以外の物流領域を、「動脈物流」「静脈物流」という言い方で分類することもあります。
物流が血管に例えられる理由は、血液が身体に酸素や栄養を届ける一方、不要な老廃物の回収も行うからです。物流も商品を全国に供給する一方で、不要品を回収する役割を担っています。
物流における「動脈物流」は、血液が酸素と栄養を全身に送る動脈のように、製品や資材が送り手から受け手に届けられる流れを表します。「調達物流」「生産物流」「販売物流」は動脈物流です。
一方「静脈物流」は、静脈が老廃物や二酸化炭素を回収して心臓に戻るように、不要になった商品や資材を回収して送り手に戻す流れを表します。「回収物流」は、静脈物流です。
物流の5つの領域とは
- 調達物流
- 調達物流とは、製品製造に必要な資材を確保する物流システムです。製造を円滑に行うために必要な原材料、交換部品、補助資材、消耗品などを円滑に調達することに重点が置かれています。資材のコストを抑えるための、購入戦略や供給方針の管理も重要なポイントです。
- 生産物流
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生産物流とは、製造拠点内での在庫や物資の移動を管理・制御し、原材料の保管から生産、完成品の保管まで、企業内の資材の流れを最適化する役割を持つ物流システムです。「内部物流」や「製造物流」とも呼ばれます。調達物流と販売物流の間に位置づけされ、これらの機能との重複する部分もあります。複数の生産拠点がある場合は、拠点間の物流も含まれます。
- 販売物流
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販売物流とは、商品の移動に関する計画、実行、管理を扱う組織間の物流システムです。供給者から顧客への物流経路を効率的にすることを目的としており、特にコストと性能に重点を置いています。
この物流は、生産と販売をつなぐ役割を果たし、製造現場から物流センターや小売店へ商品を輸送します。最終的には、企業の製品をできるだけ早く顧客に届けることを目指しています。
- 回収物流
- 回収物流とは、商品の販売地点から製造者や流通業者に製品が戻される通常の供給ルートとは逆方向の物流システムです。このプロセスでは、不良品や使用済み製品の回収、修理、リサイクル、または廃棄を行います。リサイクルや再利用のプロセスを供給者が管理することで、環境負荷を軽減したり、顧客満足度を向上させる役割があります。
物流業界の変遷
物流は、製造と販売の間に位置する後処理的な役割を担っていました。営業部門が製品を売り込み、その後物流部門が配送を担当するという形です。営業部門には売り上げという明確な成果指標がありますが、物流部門には経費というコスト面の指標しか存在しませんでした。
近年、電子商取引(EC)の市場拡大により、この状況に大きな変化が訪れ、2018年にはEC市場全体が18兆円規模に達し、物販系分野だけでも9.3兆円の規模に成長。また、宅配便の取扱個数も、2018年までの5年間で約6.7億個、18%増加しています。
このEC市場の拡大により、物流は従来の大口配送から「小口多頻度配送」にシフトし、消費者の多様なニーズや低価格化にも対応が求められるようになりました。以前は200件の注文をまとめて一度に配送していたものが、小口多頻度化により20件ずつ10回に分けて配送する形態に変わり、同じ注文数でも物流コストが割高になるという課題が生じています。
さらに、2024年より「働き方改革」によるトラックドライバーの長時間労働是正のため、労働時間の上限規制が施行されました。これにより、ドライバー一人当たりの走行距離が制限され、物流の遅延やコスト増加といった「2024年問題」が浮上しています。
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