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防錆とは 発錆のメカニズムと原因、錆を防ぐ方法
防錆とは?
金属を錆から守る技術
防錆とは、錆が発生する金属(鉄・銅・ステンレス・銀など、金以外のほとんどの金属)を錆から守るための技術です。
金属ごとの発錆因子とメカニズムは異なり防錆にも様々な手法があります。例えば錆の原因となる空気と水分に触れないように材料をコーティングして錆を防ぐ方法や防食電流を流す防錆方法、製品を防錆紙や防錆フィルムで包むことにより製品周辺の環境を制御する防錆方法があります。
例えばトタン屋根は防錆のため鉄に亜鉛のメッキを使用しているため折ったり深く傷が入らない限り錆びません。亜鉛は隣同士でイオンを発生させ腐食して膜を形成し、下にある鉄を防錆する効果があります。銀の錆は硫化水素に限られますが、銅は温泉の成分で黒くなったり、緑青と呼ばれる明るくくすんだ緑色になったり非常に多様な錆び方がありまるで七変化のようです。ちなみに銅の錆と日本画の緑色顔料の原料である孔雀石(マラカイト)は同じ成分です。主な錆の種類には、鉄に発生する赤錆・人工的に発生させる黒錆・銅に発生する青錆・銀に発生する白錆などがあります。このように錆と一口に言っても多種多様であり、全ての金属に著効を呈する防錆剤は存在しません。
「防錆」の正しい読み方
「防錆」の最も一般的な読み方は、「ぼうせい」です。「防錆梱包材」や「防錆処理」は、それぞれ「ぼうせいこんぽうざい」「ぼうせいしょり」と読みます。「防錆」という言葉を音のみで伝える際、敢えて「ぼうさび」という言い方をしたり、一部では「ぼうしょう」と呼ぶこともあるようです。「錆」を「せい」と読むので、錆が発生するを指す「発錆」は「はっせい」という読みをします。
発錆のメカニズム
錆の原因と発錆のメカニズムをご紹介します。
発錆のメカニズムは、以下の通りです。鉄が酸素と反応し、酸化鉄が形成され、酸化鉄が水分と反応して水酸化鉄を生成し、再び酸素と反応して酸化鉄に変わります。この水酸化鉄が再び酸素と反応し、酸化鉄に変化するサイクルが繰り返され、鉄が徐々に酸化・腐食し錆が発生します。
鉄は、自然界では酸素・水素の化合物である酸化鉄という状態で鉄鉱石や土壌の中に存在します。鉄鉱石を人の手で精錬し、酸素を取り除いた状態にしたものが鉄です。鉄原子は単体では不安定なため、再び安定した状態の化合物に戻るため酸素と結びつこうとします。
錆の進行条件
金属の表面
金属の表面は均一なように見えても、分子・原子といったミクロな見方をすると均一ではありません。これらの均一ではない部分を「欠陥」といいます。
錆の進行
欠陥があると金属の表面に電位の違いが生じます(分極といいます)。
電位が高い→カソード(正極) (電子を受け取り、還元反応が起こる)
電位の低い→アノード(負極) (電子を放出し、酸化反応が起こる)
電位差により電子の流れが生じる(電池作用)ことで錆びが進行します。
これらの反応が起こるためには、アノードで生じるイオンの溶媒としての水とカソードで起こる水の還元反応のための水と酸素が必要となります。
ですから錆の進行には、「酸素」と「水」が不可欠なのです。
錆の原因
錆の原因は、金属が持つ性質のほか、空気中の水分や酸素にあります。錆が発生するためには、酸素だけではなく水分も必要です。
湿度や温度の影響も受けながら、空気中の水分が鉄の表面に付着(結露)し、空気中の酸素により酸化されて、錆の発生が始まります。
水分を含まない空気中、あるいは酸素を含まない純水中では錆は発生しません。通常、空気中の水分が結露して鉄の表面に付着し、酸素によって酸化が促され錆が発生します。
他にも温度や湿度の影響も大きく、相対湿度60%RHで錆の進行スピードは速まります。
結露とは 結露の仕組み
錆の原因となる結露の仕組みを解説します。空気中に水を水蒸気として保てる上限は温度によって決まっています。これを飽和水蒸気量といいます。入浴時に窓や鏡が結露した経験は誰しもあると思います。それを例に説明を行います。
25℃相対湿度90%の浴室に含まれる水蒸気量は、飽和水蒸気量の表から計算できます。
23.07×90%=20.76g/㎥
この浴室の空気が10℃の窓ガラスによって冷やされたとすると、窓ガラス付近の飽和水蒸気量が9.41g/㎥まで減少します。
20.76-9.41=11.35g/㎥
1㎥あたり11.35gの水が水蒸気として存在できずに液体の水になります。これが温度の低いガラスに付着するため結露します。これは金属表面でも起こる現象です。
蒸着金属膜表面における水の吸着等温線
(材料環境学入門; p170, 腐食防食協会編 (1994))
初期腐食速度と水膜の厚さとの関係
(N.D. Tomashov; Theory of corrosion protection of metals, MacMillan,p368 (1966))
飽和水蒸気量未満の結露が起きない環境でも、金属表面では吸着凝縮による水の供給が起こります。金属表面への吸着する水分量と相対湿度の関係は左図のように60~70%RH付近から急激に増加することが分かっています。
また、その他に金属表面の汚れによる毛細管凝縮や塩類が付着することで起こる吸湿も水の供給源となりえます。
金属の腐食速度は水膜の厚みに左右され、右図の100Å~1μmで加速度的に腐食速度が増加します。1μmからは水膜が増加することで溶存酸素量の金属表面への供給が遅れ腐食速度は低下しだします。1mmで浸漬時と同様の状態となり腐食速度は酸素の供給が律速となります。
錆の発生因子と対処法
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錆の発生因子と対処法 |
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金属の状態 | 【発錆因子】金属表面の傷/金属表面の汚れ(手垢・汗・油脂・酸化物) 【対処法】前処理で表面の汚れをとる |
環境 | 【発錆因子】湿度/温度/結露/対流/埃(浮遊物)/凍結防止剤/海水/大気汚染物質(NOx/SOx/H2S/NH3) 【対策】旧防湿対策/密閉包装 |
包材 | 【発錆因子】C1/SO4 【対策】酸性原子/酸化物を避ける |
防錆梱包材 錆を防ぐ梱包材の種類
包むことで錆を防止する防錆梱包材をご紹介します。防錆梱包材には、防錆フィルムや防錆紙などがあります。
ウインテックスでは、気化性防錆液をクラフト紙に含浸させた鉄用・非鉄用・非鉄金属用・銅用防錆紙を製造しています。
また防錆紙の片面に水蒸気の透過性の低いポリエチレンをラミネートして密封することで、防錆ガスが外部に散逸することを防ぎ、より高い防錆性能を維持することができます。
さらにポリエチレンをテープ状に加工し編み込んだポリエチレンクロスをラミネート加工で張り合わせたPEクロス貼り防錆紙を使うことにより破裂・引裂強さを高めることができ、荷崩れや荷傷にも対応することができます。
またポリエチレン樹脂に防錆剤を練りこんだ透明な防錆フィルムは、包装された状態から内部を確認することが可能です。
弊社の製品は自動車メーカーや同部品メーカー・産業機械・建設機械各社様にシート状または角底袋として長年ご採用頂いております。
中性クラフト気化性防錆紙
フィルム貼り防錆紙
防錆フィルム
防湿防錆紙
防錆紙とは 気化性防錆紙
防錆紙とは、気化性防錆液を含浸させた紙(フィルム)で密封梱包された金属製品の表面に防錆剤の気化した防錆ガスが付着し、防錆皮膜を形成し製品を錆から守ります。そのためガスが逃げないようにすることと、ガスは空気より重いためなるべく上の方からガスを発生させることが大事です。防錆紙は防錆・包装・防水の三つ機能を兼ね備えています。
第二次世界大戦でアメリカが日本に進撃しようとした際、東南アジアの独特の湿気の多い気候によって兵器に錆が発生し、兵器を錆びから守るために最初の防錆紙が開発されました。
防錆紙の仕組み
防錆紙に含浸されている防錆剤が、徐々に気化し、防錆紙に包み込まれた鉄の周囲を防錆剤が充満します。そして鉄の表面に付着している水分に、防錆剤が溶解し、防錆皮膜を形成します。この防錆皮膜が水・酸素を遮断、鉄の表面を保護して鉄を防錆します。
→ウインテックスの防錆紙を見る
防錆紙の種類 用途と特徴
防錆紙の種類 |
防錆紙の用途と特徴 |
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メタライト(鉄用) | 【用途】主に鋼鉄用。 【特徴】気相防錆能・接触防錆能 |
メタライト共用(SS) | 【用途】鉄・非鉄金属共用 【特徴】接触防錆能(気相効果は低いが銅・銅メッキ等にはかなり気相性あり) |
銅用 | 【用途】銅・銅合金・亜鉛用 【特徴】気相性防錆能・接触防錆能 |
防錆紙の種類 | 各種鉄系金属と防錆紙の適正 |
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中性クラフト防錆紙 | 【S-15-C】評価:×× 【S-55-C】評価:× 【SK-2】評価:×× 【低クロム鋼】評価:○ 【ニッケル鋼】評価:○ 【タングステン鋼】評価:△ |
メタライト鉄用防錆紙 | 【S-15-C】評価:○ 【S-55-C】評価:○ 【SK-2】評価:○ 【低クロム鋼】評価:◎ 【ニッケル鋼】評価:◎ 【タングステン鋼】評価:○ |
防錆紙の種類 | 非鉄・処理鋼金属と防錆紙の適正(接触) |
非鉄・処理鋼金属と防錆紙の適正(気化) |
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メタライト鉄用 | 【冷間圧延鋼板】評価:○ 【アルミニウム】評価:◎ 【鋼】評価:× 【黄銅】評価:× 【亜鉛メッキ板】評価:× 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:◎ 【電気ブリキ板】評価:△ 【カドミウムメッキ板】評価:×× |
【冷間圧延鋼板】評価:○ 【アルミニウム】評価:◎ 【鋼】評価:△ 【黄銅】評価:○ 【亜鉛メッキ板】評価:◎ 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:◎ 【電気ブリキ板】評価:○ 【カドミウムメッキ板】評価:×× |
メタライト汎用 | 【冷間圧延鋼板】評価:○ 【アルミニウム】評価:◎ 【鋼】評価:○ 【黄銅】評価:○ 【亜鉛メッキ板】評価:◎ 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:◎ 【電気ブリキ板】評価:◎ 【カドミウムメッキ板】評価:○ |
【冷間圧延鋼板】評価:○ 【アルミニウム】評価:◎ 【鋼】評価:○ 【黄銅】評価:◎ 【亜鉛メッキ板】評価:◎ 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:◎ 【電気ブリキ板】評価:○ 【カドミウムメッキ板】評価:○ |
銅用 | 【冷間圧延鋼板】評価:×× 【アルミニウム】評価:○ 【鋼】評価:◎ 【黄銅】評価:○ 【亜鉛メッキ板】評価:△ 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:△ 【電気ブリキ板】評価:△ 【カドミウムメッキ板】評価:△ |
【冷間圧延鋼板】評価:○ 【アルミニウム】評価:◎ 【鋼】評価:◎ 【黄銅】評価:◎ 【亜鉛メッキ板】評価:◎ 【クロスメート処理亜鉛メッキ板】評価:◎ 【電気ブリキ板】評価:△ 【カドミウムメッキ板】評価:○ |
防錆効果 防錆試験方法
防錆剤の気化性が弱い場合や無い場合は一般クラフト紙の評価結果のように発錆しますが、弊社防錆紙ではしっかりと気化性が確認できています。防錆能力の評価方法は「JIS Z 1535 鉄鋼用防せい(錆)紙」で規定されています。その中で防錆製品の評価方法は、気化性防錆性能試験(VIA)と接触防錆性能試験に分けられています。弊社でもこの方法に則って評価を行っています。
評価方法1 気化性防錆性能試験(VIA)
防錆紙から気化した防錆剤が試験用鋼材に付着することで防錆効果を発揮します。
評価方法2 接触防錆性能試験
手順①試験用鋼材を防錆紙でこのように梱包します。
手順②防錆紙で上記のように試験用鋼材を梱包し、50℃・相対湿度100%の環境に2日間置き発錆を促進させます。この際バリア性が高い包装材の場合は7日間実施します。
手順③以上により、直接防錆紙が触れた際の試験用鋼材への影響(変色や発錆)を確認できます。
ウインテックスのコーティング設備(幅1000mm~最大3000mm)では継ぎ目がない防錆紙としては世界最大幅の製品が製造できます。
鉄鋼・自動車産業などの業界において金属製品の輸送・保管時に錆の発生を防ぐことは非常に重要なミッションです。長年の研究で蓄積された塗工技術と実績から、国内の製鉄二次加工会社様や高炉会社様、アジア各地でもご活用頂いております。基材にポリエチレンフィルムを使用した場合、紙粉がなく使用後に樹脂原料としてリサイクルできるため精密機器の輸送にも最適です。
防錆製品のお見積りやサンプル製造のご相談などお気軽にお問い合わせください。
→防錆製品一覧ページを見る
当記事は防錆の専門知識を有する担当者の監修を受けています。
記事監修者プロフィール
所属:堀富商工株式会社 品質管理グループ
資格:防錆管理士(防錆包装科) 認定番号:15155
氏名:小川浩之