防錆紙とは

防錆紙(防錆フィルム) 錆を防止する梱包資材

防錆紙 防錆紙とは

本記事は、防錆管理士(防錆包装科)の資格を持つ技術者による監修のもと作成されています。

防錆紙

防錆紙(ぼうせいし)とは、気化性防錆剤(VCI:Volatile Corrosion Inhibitor)を含浸させた紙で、金属製品を錆(サビ)から守るための梱包資材です。
防錆紙は「VCI紙」とも呼ばれ、鉄・非鉄金属を問わず、幅広い金属部品や製品の保管・輸送時に使用されています。

防錆紙から防錆剤の気化した防錆ガスが金属製品の表面に付着し、錆の原因となる水・酸素を遮断する防錆皮膜を形成します。これにより、錆の原因となる酸素や水分との接触を遮断し、金属の腐食を防止します。

防錆紙は、JIS Z 1535(日本産業規格)において「気化性さび止め紙」「気化性腐食抑制紙」として規定されています。
この規格は1959年(昭和34年)に初めて制定され、以降改訂を重ねながら、現在も多くの国内企業で標準的な防錆梱包資材として採用されています。

※「油紙」と混同されることがありますが、油を塗工した油紙と、防錆剤を塗工した防錆紙は性質が異なります。

→防錆紙製品一覧を見る

防錆紙資料①
防錆紙資料②

「防錆梱包大全 最新版」無料ダウンロードはこちら
※オリジナル資料配布中。防錆梱包の種類や特徴、防錆試験方法など。

防錆紙の仕組み 防錆のメカニズムとメリット

防錆紙の仕組み

防錆紙の仕組み

【防錆紙のメカニズム】
防錆紙は、紙に防錆剤を含浸させた梱包資材です。
防錆紙に塗工されている気化性防錆剤は少しずつ気化し、梱包された金属の周囲に防錆ガスが漂います。金属表面の水分に、防錆ガスが接触し、防錆皮膜を形成します。この金属表面を覆う防錆皮膜が製品を錆から守るという仕組みです。
→ウインテックスの防錆紙一覧を見る

防錆紙を使用するメリット

「防錆紙と防錆油の違いを比較する図解。防錆紙は防錆・包装・防水の機能を持ち、洗浄後に梱包するだけで開封後すぐに使用可能。防錆油は金属表面に油膜を形成し酸化を防止するが、洗浄・塗布・再洗浄が必要。防錆処理の方法と手間、利便性の違いをわかりやすく説明。

防錆紙のメリットは、比較的手間やコストがかからないことです。防錆紙は、防錆・包装・防水の三つ機能を兼ね備えており、前処理として洗浄を行った後製品を梱包し、包装を解いた後は製品を取り出すだけで除去する作業を必要とせず、すぐに金属製品を使用できます。
金属の錆を防ぐためには防錆紙以外にも防錆油や樹脂をコーティング、メッキコーティングをすることで金属表面を覆い酸素と水分の接触を防ぐ方法が一般的です。他にも船舶、港湾施設に使用される金属へ電子を供給し続けイオン化を防止する電気防食などいくつかの方法があります。
防錆油を使用する場合、防錆効果を最大限発揮するために金属製品の汚れを除去する前処理と、金属製品を使用する際に塗布した防錆油を除去する作業(洗浄)が必要です。

防錆紙の素材 防錆紙・防錆フィルム

防錆塗工は主に紙やフィルムに対して加工を行います。防錆紙は文字通り紙を基盤にしており、防錆紙の性能を計る際には紙の素材としての特性も考慮する必要があります。

防錆紙構造

防錆紙の基材となる紙について
防錆紙の基盤となっている紙の原料はパルプです。パルプとはリグニンという物質で結合している木材繊維を人工的に分離させバラバラにした木材繊維の集合体です。木材をすりつぶしてパルプを作ることに成功したのは1840年のことでした。パルプの主成分は二酸化炭素と水との光合成で生成されるセルロースです。紙の製造工程ではカレンダー処理を行って紙の表面を滑らかに均一にします。カレンダー処理の後にさらにコーターを使用して紙の表面に均一に顔料や接着剤などの薬剤を塗布したものを塗工紙といいます。塗工によって平滑性を得ることができるほか、薬剤を使用して防錆・防虫・防滑・抗菌などの機能を付与することが可能です。防錆塗工紙は金属梱包材として、防虫塗工は住宅建材などに、防滑紙は縦積みの製品の間にはさみ荷崩れ防止の滑り止め用途などにも使用されます。
弊社は、継ぎ目のない防錆紙としては世界最大幅の塗工処理が可能な塗工設備(コーター)を所有しています。
→ウインテックス設備紹介

防錆紙の基材となる紙の特性

引裂強さ
引き裂き強さは引き裂き試験機を使用して計測します。試験片に切れ込みを作り、切り目の両側を振り子のように前後に動かして引き裂く際の平均的な力を図ります。
破裂強さ
破裂強さは、破裂試験機で計測します。ゴム膜を加圧して膨張させ、紙を突き破る際の空気圧を図ります。
耐折強さ
耐折強さは、試験片を往復で折り曲げ破断するまでの往復折り曲げ回数で計測します。
引張強さ
引っ張り強さの試験には引っ張り試験機を使用します。試験片を上下二箇所ではさみ、一方を固定して一方を一定の速度で移動させ、破断する際の最大負荷で計測します。

防錆紙の使用方法 使い方・用途

防錆紙の使い方

防錆紙の使い方は①前処理②梱包です。まず防錆紙で包む前処理として梱包する製品の汚れや油分を除去します。次に防錆紙を開封し防錆剤が塗工されている面を内側に向けて梱包します。
防錆剤が塗工されている面を長く外気にさらすことは避けましょう。
防錆紙で梱包する以外にも梱包した製品と一緒に防錆紙を入れることで防錆効果を得る方法もあります。

梱包のコツ

防錆紙を同梱させて使用する場合の梱包のコツは防錆ガスを逃がさないようなるべく密閉させることと、空気より重いガスの性質を考え、上の方で防錆ガスを発生させることです。
防錆紙は、「鉄鋼用」「銅(銅合金)用」「鉄・銅をはじめとした全金属用」など梱包する金属の性質によって使用する薬剤の種類が変わります。用途にあった防錆紙を使用しましょう。
気化性防錆紙は取り扱いが簡単で様々な用途に応用でき、確かな防錆効果があります。
防錆紙の仕組みや性質を理解することで防錆紙の効果を最大限発揮させることが可能です。

防錆紙の用途

防錆紙の用途

防錆紙が初めて使われたのは、第二次世界大戦の時です。アメリカ軍が日本に攻め入ろうとした際に湿気によって兵器が錆びてしまい兵器を守るために防錆紙が開発されました。現在の防錆紙の主な用途は、鉄鋼や自動車部品、機械部品等の梱包です。具体的には、以下の用途に使用されています。
防錆紙の用途 5つの
①自動車工業:部品、補給部品の輸送、保管、ノックダウン用品の輸送梱包用途。
②金属工業:製鐵コイル、切板、線材などの輸送、保管用途。
③機械工業:各種機械、部品等の輸送、梱包用途。
④工具、機器:各種工具類、ベアリング等の包装、保管梱包用途。
⑤電機:重電、弱電関連機器及び部品の梱包用途。

防錆紙製品例 株式会社ウインテックスの防錆紙(VCI)

防錆紙製品一覧 日本一の広幅塗工設備を有する防錆紙メーカー

中性クラフト紙に気化性防錆紙を含浸させた鉄用・非鉄用・非鉄金属用・銅用気化性防錆紙を製造しています

防錆紙①メタライト防錆紙

防錆紙1
製品名 メタライト
使用用途
鉄用・非鉄用防錆梱包材
構成
PEラミ+印刷入クラフト+気化性防錆加工

防錆紙②フェロブライトDR-8

防錆紙2
製品名 フェロブライトDR-8
使用用途
鉄用防錆梱包材
構成
PEラミ+印刷入クラフト+気化性防錆加工

防錆紙③KSVCIフェロブライト

防錆紙3
製品名 KSVCI
フェロブライト
使用用途
鉄用防錆梱包材
構成
PEラミ+印刷入クラフト+気化性防錆加工

防錆紙④メタライト黒

防錆紙4
製品名 VCI黒
使用用途
鉄用 用途鉄鋼製品全般

防錆紙⑤メタライト赤

防錆紙5
製品名 VCI赤
使用用途
共用銅用 鉄鋼製品全般

防錆紙⑥メタライト青

防錆紙6
製品名 VCI 青
使用用途
鉄用 用途鉄鋼製品全般

株式会社ウインテックスは防錆紙の製造販売を行っています。お気軽にお問い合わせください。
→防錆紙製品一覧を見る

当記事は防錆の専門知識を有する担当者の監修を受けています。
記事監修者プロフィール
所属:堀富商工株式会社 品質管理グループ
資格:防錆管理士(防錆包装科) 認定番号:15155
氏名:小川浩之

一般社団法人 日本防錆技術協会

ページ上部へ戻る