ガスバリア性とは
ガスバリア性とは、フィルムなどの素材のガスを遮断する性能を指します。英語では、ガス透過度=GTR (gas transmission rate)と表記します。ガスバリア性が高い素材とは、ガスの透過が少ないもののことです。ガスバリア性の測定は、フィルムがガスをどの程度透過したかを目安に測ります。ガスバリア性が高い包装は、酸素や窒素・炭酸ガスと接触することによって品質に変化がある食料品や医薬品に使用されています。
ガスバリア性フィルムを使用した袋で包装することで、製品の劣化を防ぐことができます。
ガスバリア性の基準(ISO:国際標準化機構)
国際標準化機構、略称:ISO(InternationalOrganizationforStandardization)では、バリア性をガスの遮断割合ではなく、ガスの透過度(transmissionrate)で表しています。透過度が低いものをすなわちバリア性が高いと定義しています。
ガス透過度(GTR)とは
ガス透過度とは、GTR (gas transmission rate)で表記し、プラスチック材料を透過するガスの単位面積・単位時間及び材料両面間の単位分圧差当たりの体積を指しています。
ガス透過係数(ガス透過率)とは
ガス透過係数(ガス透過率)とは P (gas permeability coefficient of gas permeability)プラスチック材料を透過するガスの単位厚さ、単位面積、単位時間及び材料両面間の単位分圧差当たりの体積です。
ガス透過率の評価方法
ガスバリア性の主な測定方法は、差圧法と等圧法と小袋法の3つのタイプに分類できます。
差圧法には、圧力法と容積法があります。等圧法には、キャリアガス法、カップ法、電極法、Ca法があります。
湿気に弱い食品を包装する食品包装用のバリアフィルムの場合は、水蒸気透過度の測定が必要になります。食室内での通常の温湿度から、輸送環境や保管先で一時的に高温多湿な環境下にさらされたケースを想定して、25度(60%RH)~40度(90%RH)までの範囲でフィルムの水蒸気透過度を測定するケースもあります。
ガスバリア性の評価方法1:差圧法とは
差圧法とは、フィルムのガス透過度(ガスバリア性)を圧力差を利用して試験体に試験ガスを透過させ、計測する方法です。差圧法では、ガスバリア性の温度依存性や、窒素や酸素、水素、二酸化炭素、メタン、ヘリウムなど様々なガスの透過度の測定が可能です。差圧法は、測定時間が長くかかること装置の真空漏れによる誤差が生じるというデメリットもあります。
差圧法の試験方法
差圧法の試験方法は、以下の通りです。フィルムの片面はガスを供給する高圧側、片面は真空状態の低圧側とします。高圧側から低圧側にガスを供給します。フィルム内部の圧力が時間とともに変化したデータを測定します。
差圧法は、圧力センサ法とガスクロマトグラフ法の2つに分けることができます。
圧力センサ法
圧力センサ法とは、差圧法として一般的に多く採用されています。圧力センサ法では、透過性が高~低(ハイバリアフィルム)まで幅広く評価できます。
【圧力センサ法の試験方法】
ガスバリア性を測定するフィルムの試験片を、ガス透過セルのチャンバーの間にセットします。低圧チャンバを真空排気し、試験ガスを高圧チャンバに注入します。ガスがフィルムを通過し、低圧チャンバ内部に透過します。低圧側の圧力上昇・ガスの増加量で、対象シート・フィルムの透過率を測定します。
ガスクロマトグラフ法
ガスクロマトグラフ法とは、低圧側を真空状態にして、高圧側に試験ガスを注入し、試験片を通過して投下したガス量をガスクロマトグラフ法で測定し、ガスバリア性を測定する方法です。混合ガスの透過率も測定できます。
【ガスクロマトグラフ法の測定方法】
試験片を装着し、真空ポンプで低圧側、高圧側の順に排気します。高圧側の排気を停止して、試験ガスを注入し、上部チャンバを一定圧力で保持します。一定時間、低圧側の廃棄を行います。試験片を透過したガスを一定時間ため、ためたガスをキャリヤーガスでガスクロマトグラフに導入し、透過ガス量を測定します。
ガスバリア性の評価方法2:等圧法とは
等圧法とは、ガスバリア性を測る試験片のガス導入側とガス透過側の気圧を等しく保ち、分圧差(濃度と比例する)で透過したガスを測定する方法です。等圧法に分類される測定方法は、キャリアガス法、カップ法、電極法、Ca法があります。酸素ガスを測定する場合は、等圧法が一般的に採用されています。
試験には、厚みが均一でシワやピンホールがない素材を用意します。また素材のガス透過面を実際に使用する時の状態と同じにします。包装時にガスが侵入する方向が外側→内側になる場合は、ガスの透過面を外側に合わせ、内側から外側にガスが透過する場合は、試験時の透過面を反対にします。
ガスバリア性の評価方法3:小袋法とは
小袋法とは、ガスを密封した袋を測定したい特定条件下に放置し、袋内部のガス濃度と袋の容積の変化により、ガスの透過性を測定する方法です。小袋法のメリットは、検査方法が手軽で、様々なガスを測定することができ、特定環境を温湿度の調整によって容易に再現できることです。
ガスバリア性材料
ラミネート技術

近年、様々な素材や材料がフィルムとして使用されています。フィルムの原料となる樹脂や金属にはそれぞれ固有の性質があり、使用用途に合わせて最適な素材を選ぶことが重要です。酸化に弱い製品や気化しやすい製品の場合は、ガスバリア性が重視されます。生鮮野菜の包装では、鮮度保持のため二酸化炭素のみ通過させる性質や、壁材では水蒸気など湿度は通過させて雨の水滴は通さない防水性を兼ねたもの(透湿防水シート)、香り分子を通さず内部に保持することができる保香性など、フィルムには様々な機能があります。
こちらでは、ガスバリア性が比較的高い素材をご紹介します。
PET(樹脂) ポリエチレンテレフタレート
PETは、ポリエチレンテレフタレート(Polyethyleneterephthalate)の略称です。ポリエチレンテレフタレートとは、石油由来のテレフタル酸・エチレングリコールを原料に製造される熱可塑性樹脂です。延伸フィルムとして使用される場合は、透明性やガスバリア性に優れています。無延伸フィルムとして使用される場合もあり、耐油性・耐薬品性に優れています。またPETボトルや、耐熱ボトルとしても使用されています。
PVDC (樹脂) 塩化ビニリデン樹脂
PVDCは、ポリ塩化ビニリデン(polyvinylidene chloride)の略称です。ポリ塩化ビニリデンとは、無色透明で、酸素や水分の遮断性が高く、ガスバリア性に優れた素材です。1838年にフランスの化学者・物理学者であるアンリ・ヴィクトル・ルニョー(Henri Victor Regnault)によって発見されました。耐候性・耐薬品性・耐熱性も高いため、食品包装フィルムやラップ、工業用シートにも使用されています。
アルミ箔
アルミ箔は、アルミニウムを延伸した素材です。
光沢性、熱伝導性、断熱性、ガスバリア性、遮光性、防湿性に優れています。また比重が鉄の約3分の1で非常に軽く、食品包装や医薬品包装に最適です。使用用途は非常に幅広く、チョコレートや和菓子などの製菓包装、チーズやバター・ヨーグルトなどの繊細な乳製品、錠剤や粉末剤用の医薬品包装、屋根や床材・断熱材などの建築用資材などに使用されています。
アルミ蒸着フィルム
アルミ蒸着フィルムとは、OPPフィルム(延伸ポリプロピレン)やPET(ポリエチレンテレフタレート)、CPP(無延伸ポリプロピレン)などの熱可塑性樹脂を使用したフィルムに、加熱して蒸発させたアルミの分子を付着(蒸着)させた素材です。アルミ箔は、アルミニウムを延伸させたものであるのに対して、アルミ蒸着フィルムは、フィルムにアルミ分子を付着させた素材であるため、ガスバリア性はやや劣ります。しかしコスト性に優れており、防湿性や酸素ガス遮断性を有しているため、バリアフィルムとして広く使用されています。
透明蒸着フィルム
透明蒸着フィルムは、アルミ蒸着フィルムと同様の蒸着という技術で製造されている素材です。酸化ケイ素やアルミナを加熱蒸発させて、PET・OPPなどの樹脂フィルムに付着させています。酸化ケイ素やアルミナを使用するため、透明性に優れています。
ラミネートシート
押出ラミネート

ガスバリア性が高い包装資材をバリア包装材と呼びます。
樹脂フィルム単体では、目に見えない小さな穴により酸素や窒素ガスを通しやすくなります。そこでアルミ箔などの金属を樹脂フィルムに貼り合わせて、金属でガスを遮断するバリアフィルムが使用されます。
この異なる素材同士を均一に貼り合わせ、一枚のシートとして仕上げる技術をラミネートといいます。ラミネートは、アルミフィルムや、アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルムなど様々な素材を貼り合わせたバリアフィルムの製造に使用されています。ラミネートの方法には、熱ラミネートやウェットラミネートなどいくつかの種類があります。
株式会社ウインテックスでは、接着剤を使わず熱と圧力のみで張り合わせる押出ラミネート加工技術によって、バリア性が高い包装資材や輸送容器をご提供致します。
ガスバリア包装
バリア性が高い輸送容器 粉体・液体

商品名 | ホリフトシステム |
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用途 | 組み立て式輸送用コンテナ |
特徴 | |
8段まで段積み可能、組み立て式で省スペース。内袋部分をバリア性が高いアルミ袋に変更可能。ラック・パレット・容器が一体型で安定性が高く効率的な輸送が可能です。 →ホリフトシステム製品ページ |
押出ラミネートの受託会社をお探しの方、バリア性が必要とされる製品の梱包についてなど、具体的な案件だけではなく、検討段階にある製品のご相談も歓迎です。以下のお問い合わせフォームより、お気軽にお声がけください。